2019/10/18
UI/UXデザインといってUIと並列に語られることが多いUXデザイン。
ウェブサービスのUXデザインって今誰がやってるかというと、ウェブデザイナー歴が長い人がとりあえずやってるみたいなことも多いんでしょうか?
UIはともかくUXに関しては私はちょっとそれに違和感があったりします。
なぜかというとウェブのUXに関しては画面の外側のほうが大事なことがほとんどだからです。
サイトにユーザーが求めるUXって何か?
UXはユーザー・エクスペリエンス(体験)な訳ですが、サービス提供側がユーザーにさせたい体験とユーザーが求めている体験って結構差があったりします。
最低限ユーザーが求めるものを提供できた上で+αでしてあげないといけないとダメだよね?・・・てのが基本だと思うんですけど、なぜかクライアントの決定権に近いお偉いさんほど「新しいUX」「驚きを提供できるUX」「ユニークなUX」っていうサプライズや感動ありきの派手なものを求めがちです。
広告である限り耳目を引いて目立つものをってなるのはわかりますし、そういうのは最初に興味を持ってもらうためにあってもいいと思います。
あっていいと思いますが、ユーザーが本当に求めてるサービスの本質はそれじゃないってところも忘れないようにしないといけません。
むしろユーザーに選ばれ続ける、使われ続けるための良質なUXデザインは目立たないようにされているものです。
ユーザーからすると他と違ってなんかいい、くらいの言語化しづらいものだったりもします。
- ストレスを感じない
- 気分が上がる
- 親しみを感じる
- なんとなく楽しい
などの割とふんわりしたもの。
逆に設計者の作為を明確に感じると反発を覚えてしまったりします。
UXは誰がデザインすべきか?
そもそもUXが何を指すかがふんわりしているので、勉強すればするほどよくわからないなって思ってる人が多いと思います。
人によってイメージするものもちがうし、なにができればUXデザイナーと名乗っていいのかよくわかりません。
わかりませんが、それでもよいUXの本質は「ユーザーにとってマイナスの要因を排除してプラスの要因をふやす」だと思っています。
ただしマイナス要因を減らすのはサービス利用者にとってはいいことなんですが、それだと企業利益につながらなかったりします。
サービス提供側もそのプロダクトのユーザーであることを考えないとよいUXにはなりません。
たとえば「費用がかからず無料で使える!」とかはユーザーにとっては最大のマイナス要因がなくなってとてもいいことのはずですが、それだと継続してサービス提供ができなくなる可能性があってその対策をまずしておかなければいけません。
プラス要因を増やすのも、増やし過ぎたことによって複雑化しすぎて初期学習コストが増えたり、サービス維持のためのコストが増えたりすると結果的にユーザーにとってよくないってことが起こります。
あまりニーズのない機能をいくら増やしても多くのユーザーにとってはメリットがありませんし、それによる値上げはユーザーからの納得が得られないでしょうしね。
わかりやすいUIそしてユーザーサポートがあるので安心です(キリッ)とかやっていても、ユーザーサポートに寄せられる声は結局「かわりにやってくれない?」だったりします。
この場合わかりやすいUIとかより有償で代行サービスを提供した方がユーザーのためになるし、サービス提供側にもメリットあるよねというお話は往々にしてあるわけです。
ということでバランスが難しくてユーザーの声にこたえさえすれば正解というわけでもないし、これが必要最低限のものだという明確な基準がどこかにあるわけではないのです。
競合他社の成功パターンみたいなのはあるわけですが、それとまったく同じことをやっていても差別化につながらないですしね。
でもともかくUXの最適解をもとめるためには、実際にユーザーにどう思いますか?
って声をひたすら聞いて判断していく、これ以外に方法はないはずです。
つまりユーザーの声を直接聞いている営業とか、ユーザーサポートとかマーケティング担当とか、実はデザイン業務から遠い人ほどサービスの何を改善すべきかがわかっているはずなのです。
逆にデザイナーはユーザーの声を直接聞いていない。
苦手というか、デザイン業務の片手間でやれるほど楽なものではないからです。
外部の制作会社に制作を依頼する場合、ディレクターと呼ばれる人がクライアントと話をし、デザイナーはリテイクという形でクライアントの声を聞くことはよくあれどもユーザーの声を聞くことがあまりない。
あってもほぼクライアントがきいたユーザーの声をディレクターがきいて、それを担当デザイナーにつたえる、みたいな超また聞き状態で正確には伝わってないことがほとんどでしょう。
残念ながらデザインを専門にやってきた人ほどそうだと思います。
そして中小企業だとよくありますが、「ユーザーはウェブのみで申し込み完了してほしいと思っているのはわかってるけど、対応できる担当者がいないから電話で問い合わせをさせる」みたいなことです。
この問題は画面の中だけで完結するものでもないわけです。
さて、ここで美術系の学校を出てずっとデザインをやってきた人に良いUXがデザインできるだろうか?という疑問が湧きます。
まぁUXデザイナーがことさらに求められているというのがその答えだと思いますが・・・・・。
ということで、デザインって名前がついてるから経験の長いデザイナーがとりあえずUXデザインやればいいでしょってのは安直だなーと思うわけです。デザイナーに対して失礼だし本人にとっても不幸なのでは?
UXデザイナーにもとめられるスキルセットとは?
私はカスタマーサポートからキャリアをスタートしました。
自社で提供するPCアプリやWebサービス、プログラムなどのサポートをやっていました。
中にはなんでこんなUIにしたんだ、つくったやつ何も考えてないな?みたいなのとか。
実際そういうのって技術者が技術用件だけみたすものをつくっていたっていうものが多くて、デザイン思考が足りてない。
だからってそれを会社に言ったところで何も変わらない。
制作しているのは外部の会社で、意思疎通もできず今あるものを変える権限は何もない。
権限がある人間は、あまり重要視してくれない。
・・・・今はもうちょっとそこらへんの重要度をわかっている人も増えたかと思うのですが、直接ユーザーの声を聞いた人とそうじゃない人の温度差って絶対にうまれますよね。
私はそこで頑張るより制作する側に行くことにしたのですが、制作の現場に行って気づいたのは制作段階ではもう手遅れなことが多々あるってことです。
「もうそれでクライアントにOKもらってるから(今更覆してたらスケジュールが・・・)」
とか
「予算がないので今回はそのままで」
とか、まぁ大人の事情もあるんですけど、もっと初めから絡んでればこうはならなかったよね?
画面上でなんとかできるものでもなくない?
みたいな。
で、作り終わったら終わったでフィードバックが一切届かなくて良かれと思ってやったことが本当によかったのか、実はありがためいわくだったのか結局わからない・・・・。
っていう現実。
デザイナーなりフロントエンドなりアプリエンジニアなり、一介の制作者でいる限り多分一生ユーザーに最適なものを作れるようになんてならないんじゃないの?
想像上の「多分これがベスト」しかできないんじゃないの?
そんな感じがしてしまいますね。
つまりウェブのUXなんて、画面の外にある表に見えないサービスの仕組みやユーザーの置かれた状況を理解して、そこから関与できる権限がないとダメなわけです。
逆に言うとUXデザイナーに本当に必要なのものというのは実はここだけで、ユーザーにとってマイナスの要因を排除してプラスの要因をふやす、それによって企業側のメリットも増やすってことができる人であれば別にデザイナーじゃなくてもいいはずなんですよ。
経営者でも、営業でも、サポートでも、エンジニアでも、自分のできないことは人に任せてこういう目的にあうように変更してくださいねって作業してもらえば別にいいんじゃないかなって思います。
UXを改善する場合の
1.情報収集→2.分析と問題定義→3.解決方法の仮定→4.実行→5.効果測定と評価→充分でない場合3に戻る→6.完了
のうち1、3、4はUXデザイナー自身ができなくてもそれぞれの専門職にまかせてしまっていいんじゃない?ってことです。
まぁ世間一般的には3や4のことをデザインって呼ぶんですけど、大事なのは2と完了までもっていかせるための色々な権限であって解決手法を考える=デザイン自体はデザイナーっていう肩書きでなくてもできるはずです。
ネックになってくるのが1、3、4を他の誰かに継続的にしてもらうのが分業化された業態、特に大きな規模の会社だと本当に難しいってところ。
だからそれをUXデザイナーっていう肩書でやってねってことなのだと思うんですけど、受け入れる側がそれを理解してないと意味ないですよね。
せっかく提案しても分野外はちょっと口出ししないでほしいんだけど・・・ってなりがちな気がします。
なにがいいたいかというと私は根本的には「UXデザイナーじゃないとできないこと」なんてほんとはないんじゃないの?
やらせてもらえないだけなんじゃないの?
と思っているということです。
とはいえUXデザイナーという肩書がついたことで、今まで口出しできなかった部分に切り込んでいけてるならよいですけどね。
なんだか社内の人間がいくらいってもダメだったのに外部コンサルがはいったとたんサクッと変更される、みたいなのに似てますね。
UXデザイナーに求められるのは「それ画面上の装飾でどうにかしようって思う前にもっとやることあるだろ」を言葉を変えて提示して、納得してもらえるコミュ力かな。
やはり、経営層にこれがやれる人がいるといいですよね。